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難聴,原因

~ 言語障害コラム ~ 難聴の原因や治療法、聞こえの仕組みを言語聴覚士が解説①

難聴について専門家が解説します

みなさんはじめまして!言語聴覚士の林です。私は、言語聴覚士として滑舌にお困りの方へ滑舌改善のレッスンを行っています。

みなさんは「難聴」と聞くと、どのようなことを思い浮かべますか?音が聞こえない…手話を使って会話をしていたり、補聴器をつけていたり、このようなことを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

難聴による孤独少子高齢化が嘆かれる昨今、ある研究では65歳以上の高齢難聴者は全国に1,500万人に上るというデータがあります。これは難聴者全体の約70%にもなるそうです。年齢に限らず、難聴になると社会的に孤立しやすくいです。また、抑うつや認知機能の低下などの二次的な障害が生じることもあります。

二次障害を予防するためにも、正しい知識や適切なコミュニケーション方法を知ることがとても大切です。

このコラムでは、難聴の人とのコミュニケーションって…?具体的にどういう方法があるの?というような難聴について小さな疑問をお持ちの方に向けて、難聴についての基礎知識やコミュニケーション方法などを全5回のコラムで解説していきたいと思います。

 

難聴とは?

「難聴」とは、『聴力が低下していること』をいいます。似たような意味でよく使われる「聴覚障害」は、厳密には『難聴によってもたらされる様々な不便などのこと』とされています。しかし、一般的には厳密な違いはほとんどありません。

ここでいう聴力とはどのくらいの音の大きさが聞こえているかを表すものです。これは聴力検査で調べることができます。聴力検査では、低音から高音まで調べます。では、聴力検査で使用される単位の説明をします。主に以下の2つです。

・dB(デシベル)
音の大きさを表す単位
・Hz(ヘルツ)
音の高さを表す単位

一般的に難聴の程度を表すとき、これらの単位を用いて平均聴力レベルを表します。

この平均聴力レベルは、500Hz、1,000Hz、2,000Hz、4,000Hzの4つの音の平均値のことです。

4つの音の高さの平均値を調べる理由は、様々な音の高さの聞こえの状態を知る必要があるからです。そうすることで、どのくらい生活に支障をきたしてしまうかを知る判断材料になります。

 

音の伝わり方を解説!

難聴の説明をする前に、音の伝わる過程について説明したいと思います。普段の会話で使用している音声言語を例に説明していきます。

まず、下の図1、2を見てみましょう。

図1
難聴と音の伝わり音波

図2

難聴と音の伝わり電子信号

①相手の発した言葉が音波として、自分の耳に伝わります。

②耳の中に入ってきた音波は鼓膜・中耳を経て、内耳へと伝わります。

③音波は内耳の中の有毛細胞という部分で電気信号に代わります。この内耳に伝わる過程で音の高さなどの弁別を行っています。

④電気信号は蝸牛神経を通り、脳の聴覚野へと伝わります。この聴覚野で言語なのか、生活音なのか、音楽なのか、などの弁別を行います。

このようにして、私たちは聞こえてくる音を聞き分けています。そして、この4つの過程のうち②音波が内耳へ伝わるまで③電気信号が内耳から聴覚野に到達するまでの2つの過程のどこかに問題が生じると聴力が低下してしまいます。

耳の構造について聴覚障害コラムで詳しく紹介しています。気になる方は聴覚障害コラム①をご覧ください。

 

難聴を時期別に解説

次は、難聴の種類について説明します。大きく以下の3つの種類に分けることができます。

・伝音性難聴
音を伝えることが難しいことが原因で起こる難聴です。

具体的には、外耳が閉塞してしまったり、中耳炎になってしまったりするなど、音を伝える過程に問題によって起こります。補聴器を用いた治療に効果があることが多く、言葉の聞き分けは比較的良いです。

・感音性難聴
電気信号を認識することが難しいことが原因で起こる難聴です。

具体的には、内耳の有毛細胞が減ってしまったり、蝸牛神経に問題が生じたりするなど、音を感じることができないため起こります。補聴器などの治療効果は低く、言葉の聞き分けが難しいのが特徴です。

・混合性難聴
伝音性難聴と感音性難聴が混合しているものです。

 

難聴の原因について

難聴の原因ここでは難聴の原因について時期別に説明します。時期別に分けると以下の2つです。

1:先天性難聴
生まれつき起こるものです。原因としては、遺伝や胎内感染、耳の奇形、低出生体重児などがあげられます。

2:後天性難聴
もともと正常の聴力があったにも関わらず、なんらかの原因で起こるものです。原因としては、加齢、耳鼻科疾患、ウイルス感染、薬剤性、頭部(耳)のケガ、長期的な騒音によるもの、ストレスなどがあげられます。

どちらも伝音性、感音性、混合性、それぞれの難聴になります。

このように時期によって原因が異なります。また、後天性難聴は中途失聴などとも呼ばれます。そして、現在、最も多いのが加齢に伴う老人性難聴だといわれています。

難聴の種類や原因について聴覚障害コラムで詳しく紹介しています。きになる方は聴覚障害コラム②をご覧ください。

 

加齢に伴う難聴を解説!

現在、最も多いといわれる加齢に伴う老人性難聴について、もう少し詳しくご紹介したいと思います。老人性難聴は感音性難聴の1つで、具体的な原因は以下のようなものがあげられます。

・内耳の中の感覚細胞の障害
・脳への神経路の障害
・中枢神経の障害
・内耳の血管障害 など

加齢に伴い、これらが複雑に重り合うことで耳の聞こえが悪くなってしまいます。

感音性難聴である老人性難聴の大きな特徴の1つに言葉の聞き分けが難しくなることがあります。そのため、聞き返してしまうことも増えてしまいます。こうなると、お互いにイライラしてしまったり、話すことを諦めてしまったり、家族とのコミュニケーションが難しくなってしまうことも多いです。

補聴器などの効果は得られにくいため、補聴器を装用した上でのリハビリテーションなどを行います。そうすることで、ここの程度に応じたコミュニケーション方法を専門家と検討することができます。

 

難聴の重症度を説明します

ここでは、難聴の難易度の説明をします。難聴があると日常生活で様々な支障が生じます。それは難聴の程度、つまり重症度によって異なります。具体的には、日本聴覚医学会難聴対策委員会で以下のように示されています。

難聴のレベルこのように程度によって日常生活に様々な問題が生じます。そのため、コミュニケーション手段の補助や、周りの人の協力などが必要になります。

 

難聴コミュニケーションと家族の協力

難聴の方とのコミュニケーション手段をご紹介します。

難聴があるとコミュニケーション方法を工夫する必要があります。会話するために必要な対応を医師などと相談して行います。具体的には以下のようなものがあります。

1.聴力の補填
・補聴器の使用
・人工内耳の使用

2.視覚的コミュニケーション手段
・筆談
・読話
・手話
・指文字

先天性でも、後天性でも基本的な対応方法は変わりません。難聴の程度や生活環境に応じて、個々に合った方法を検討していきます。

そして、周囲の人の協力が必要不可欠になります。特にご家族の方の協力はとても大切です。そのため、生活で困ったことや、今後、困りそうなことなどを想定します。それらに対する対応策を考えながら新しいコミュニケーション方法に慣れていくことが多いです。

 

唇を読むコミュニケーションの解説

難聴といっても、原因はとても多く程度によって日常生活で困ることも人ぞれぞれだということがわかりました。具体的にどのようなコミュニケーション方法があるのかを次回以降のコラムでご紹介します。内容は以下の通りです。

コラム② 難聴の原因を聴力を補填して改善
コラム③ 難聴の原因を唇を読んで改善
コラム④ 難聴の原因を改善する手話コミュニケーションを解説
コラム⑤ 難聴の原因や改善策のまとめ

コラムを通して難聴のコミュニケーションについてわかりやすくご紹介していきたいと思います!難聴を正しく知り、コミュニケーションをより楽しみましょう!次回の難聴コラムもお楽しみに♪

★難聴の重症度や原因を理解して周囲協力とともに克服を

 

*参考文献・書籍
1)内田育恵. "高齢期難聴がもたらす影響と期待される介入の可能性." 音声言語医学 56.2 (2015): 143-147.
2)山田弘幸:言語聴覚療法シリーズ6改訂 聴覚障害Ⅱ−臨床編 建白社 P88〜142 2008
3)鳥山稔・田内光:言語聴覚士のための基礎知識 耳鼻咽喉科学 医学書院 P36〜80 2007


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