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~ 滑舌コラム ~ 滑舌のトレーニング方法を専門家が解説します①

みなさんはじめまして!言語聴覚士の林です。私は、言語聴覚士として滑舌にお困りの方へ滑舌改善のレッスンを行っています。

みなさんは「滑舌」と聞いてどのようなことを思い浮かべますか?滑舌は自信ないな…なんて方もいらっしゃると思います。また、滑舌良く話しているアナウンサーの話し方や発音なんかが思い浮かんだのではないしょうか。

「滑舌」とは、演劇やアナウンスなどで、セリフや台本をなめらかに発声すること(三省堂 大辞林より)をいいます。また、話すときの発音やことばの調子がなめらかであるかどうか、ということ(実用日本語表現辞典より)です。

また、スラスラと流暢に噛まずに喋ることができる様子を「滑舌が良い」などという(実用日本語表現辞典より)こともあります。

このコラムでは、滑舌に悩んでいる方やより良くしたい方に向けて、良くする具体的な方法やトレーニング方法について全6回のコラムで解説をしていきたいと思います。

 

滑舌で印象が変わる!?

私たちのコミュニケーションに欠かせないのが言葉(聴覚情報・言語情報)です。例えば、行動により相手に与える声の印象は全体の約45%あるといわれています。その内訳は聴覚情報が38%、言語情報が7%です。声の印象というのは聴覚情報によるものですから、全体の約40%を決めるということです。

声の印象というのは具体的にイントネーションや話す速さ、声の高さなどのことをいいます。滑舌は「発音やことばの調子がなめらかかどうかということ」ですから、この声の印象に含まれます。滑舌が悪いとそれだけで全体の印象も悪くなってしまいます。

声の印象が他人に与える印象というのは、意外と大きいものということになります。また、滑舌に自信がない人は、知らず知らずに発音しづらいという自信の無さ(コンプレックス)が声に出てしまい暗い印象を与えているかもしれません。

 

機能性構音障害とは?

では、なぜ滑舌は悪くなってしまうのでしょうか。

構音=発音の専門用語です。機能性構音障害とは、明らかな原因がないにも関わらず発音がうまくできないことをいいます。滑舌が悪いと悩んでいる方は、この機能性構音障害である可能性が高いです。

では、機能性構音障害かどうかセルフチェックをしてみましょう。当てはまるものにチェックをしてください。

1.□ 過去に口唇口蓋裂・舌小帯短縮症と診断されて、手術を受けたことがある
2.□ 過去に病気や事故などで、顔面の手術を受けたことがある
3.□ 脳血管疾患の既往がある
4.□ 舌や唇に動かしづらい感覚がある
5.□ 話し始めが詰まってしまい、ことば出てこないことが多い
6.□ いつも言い間違えてしまうのは違う音である

セルフチェックで当てはまるものはありましたか?このチェック項目に1つでもチェックがあった方は機能性構音障害ではなく、違う言葉の問題が原因の可能性が高いです。

・1、2に当てはまった方
器質性構音障害の可能性あり

3、4に当てはまった方
運動障害性構音障害の可能性あり

5、6に当てはまった方
吃音(どもり)の可能性あり

この3つは全て話し言葉に問題が生じるものです。しかし、原因が全く異なり改善のための方法やトレーニング方法も変わってきます。では、具体的にどのようなものなのでしょうか。

 

問題は違うところに?!

機能性構音障害以外で言葉に問題が生じるものを紹介していきたいと思います。今回は以下の3つを具体的に説明します。

1.運動障害性構音障害
2.器質性構音障害
3.吃音

滑舌が悪いと特に間違えられやすいものをピックアップしました。では、早速解説していきたいと思います。

1.運動障害性構音障害
脳血管疾患や事故などが原因で起こります。発音に必要な運動を司る脳の部位を損傷してしまうことにより、神経の伝達に問題が生じてしまいます。これにより、舌や口唇に麻痺などの障害が生じることで構音がうまくできなくなるものをいいます。

2.器質性構音障害
舌や唇など、発音に必要な部分に構造的な問題が生じることで起こります。この構造的な問題は大きく2つあります。
①舌小帯短縮症や口唇口蓋裂のような先天的な問題
②事故や手術などによる後遺症のような後天的な問題
です。このように、発音に必要な舌などを正しく動かすことが構造的に難しい状態をいいます。

3.吃音(どもり)
身体(口や舌など)に問題がないにも関わらず、たどたどしい話し方になってしまうことをいいます。なんの問題もないという点では機能性構音障害と似ているように感じるかもしれません。しかし、吃音は舌の使い方に癖はありません。

ここで紹介したものは、発音などの言葉に問題が生じてしまうもののほんの一部です。この他にもたくさんものがあります。しかし、一般的な“滑舌が悪い”とされる原因は機能性構音障害であることが多いです。あくまでセルフチェックですので、症状が気になる方は医療機関へ受診してみてください。

 

悪くなる原因は舌の癖

滑舌が悪くなる原因の多くは、機能性構音障害による舌の使い方の癖です。この舌の癖のせいで舌をコントロールすることができなくなってしまいます。舌のコントロールができないと、正常の発音動作を舌ができません。すると、発音が曖昧になり滑舌が悪くなってしまうのです。

私たちは成長していく過程で正しい日本語の発音を身につけます。機能性構音障害は、その発音の発達過程で、本来の日本語にはない発音を身につけてしまいます。この本来の日本語にない発音というのが、舌の癖であり“滑舌が悪い”と苦しむ原因です。

本来の日本語にない発音というのは、舌が余計な動きをしていたり必要な動きを十分にしていなかったりすることをいいます。異常な動きではないけれど、ほんの少し動きが違うだけで違和感を感じてしまいます。

ここで、滑舌が悪くなってしまう原因を具体的に紹介します。代表的なものは以下の4つです。

①舌のコントロールができない(舌が不器用)
これは舌の癖のせいです。舌の癖とは、舌に不必要な力が入ってしまい、スムーズに発音することができないことをいいます。そのため、コントロールができず発音が曖昧になったり音が歪んでしまったりします。

②正しい発音動作ができない
舌の動きが不十分なため、1つ1つの発音動作を正しくすることできません。そのため、音が歪んでしまい苦手な音ができてしまいます。

③正しい発音を連続ですることができない
単語や文章などは音が連なって出来ています。1音の発音が出来るようなったら、その正しい発音を連続して行うことが必要です。

④舌の耐久性が低い
舌の耐久性というのは連続して発音をし続けるための力のことです。日常生活では、発音を連続で行いながらコミュニケーションを取っています。舌の耐久性が低いと、話しているうちに歪みが多くなってしまいます。

これらが、代表的な滑舌が悪くなる原因です。

 

トレーニングで必ず改善します

機能性構音障害の症状を改善するには、まず問題となっている舌の癖をトレーニングで直すことが必要になります。この舌の癖は人それぞれ異なるため、癖にあった方法でトレーニングすることが大切です。

自分の舌の癖を見極めトレーニングを繰り返すことで発音を良くすることはできますが、時間と繰り返し トレーニングをすること必要です。そのため、“なんの音が どのように苦手か”を知って、正しい発音を身につけることが一番の近道です。

また、すぐに改善をさせようと焦らず、トレーニング方法やトレ-二ングすべき音が合っているかを確認しながら、根気強くトレーニングを続けることが大切です。

 

次回から「舌のトレーニング方法」を解説

このように、滑舌が悪くなる原因は機能性構音障害による舌の癖が原因であることが多いです。そして、舌の癖をトレーニングで直すことによって改善することができます。次回以降は滑舌を良くするトレーニング方法について紹介していきます。内容は以下の通りです。

コラム2 滑舌を良くするトレーニング方法とは
コラム3 滑舌を良くする発音のトレーニング方法とは
コラム4 滑舌を良くする発音の方法を身に付けよう
コラム5 滑舌を良くする方法「舌の耐久性を上げる」とは
コラム6 滑舌を良くする方法で苦手意識を解消しよう

トレーニングで滑舌を改善することができるといっても、すぐに良くすることはできません。トレーニングを繰り返す中で舌の癖を取り除き、自分で舌のコントロールをする必要があります。しかし、意識して改善をしていけば少しずつ良くなっていきます。滑舌を良くして、より良いコミュニケーションを図りましょう!次回のコラムもお楽しみに♪

★滑舌は相手に与える印象に影響する
★悪くなる原因は舌の癖!
★トレーニング方法をしっかり確認しよう
★トレーニングをすれば必ず良くなる

 

参考文献・書籍
1)菅原衣織, and 伊藤貴之. "倍音分析によるいい声作りの支援アプリ開発に向けて." エンタテインメントコンピューティングシンポジウム 2013 論文集 2013 (2013): 51-55.
2)平野美保. "パラ言語スキルに焦点化した音声行動学習プログラムの開発と評価: 職業生活に向けたコミュニケーションスキル獲得の支援のために." 日本教育工学会論文誌 34.1 (2010): 23-33.
3)本間慎治ら:言語聴覚療法シリーズ7 改定 機能性構音障害 建帛社 P11〜116 2007
4)西尾正輝:ディサースリアの基礎と臨床 第1巻 理論編 インテルナ出版株式会社 P69〜72 2006
5)西尾正輝:ディサースリアの基礎と臨床 第2巻 臨床基礎編 インテルナ出版株式会社 P9〜46 2006
6)小寺富子:言語聴覚療法臨床マニュアル 改定第2版 協同医書出版社 P348〜397,418〜439 2004


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問題と原因を確認して改善を目指していきましょう。